「銀行口座を持っていない…派遣の給料って手渡しでもらえるのかな?」
派遣で働き始めるとき、給料の受け取り方は意外と気になるポイントです。口座の事情で振込が難しい方もいれば、できるだけ早く現金で受け取りたい方もいるでしょう。
この記事では、派遣社員の給料を手渡しで受け取れるのかを、労働基準法の賃金支払いのルールから解説します。派遣会社が手渡しをしない理由、日払い・週払いや前払いといった早く受け取る方法、2023年4月に解禁された給与のデジタル払い、手渡しを求められたときの確認点も紹介します。


派遣社員の給料の手渡しは法律上可能
派遣社員の給料を現金で手渡しすることは、労働基準法上の原則どおりの支払い方です。一方で、実際の派遣会社の給料は、あなたの同意を得たうえでの口座振込が主流になっています。
派遣社員の給料は派遣会社が支払う
派遣社員の給料を支払うのは、雇用主である派遣会社です。派遣先は派遣会社に派遣料金を支払う立場で、あなたに給料を支払う立場にはありません。
派遣会社には、就業規則や労働条件通知書で定めた支払日に給料を支払う義務があります。派遣先から派遣料金がまだ入金されていなくても、派遣会社があなたへの給料の支払いを遅らせることはできません。
労働基準法が定める賃金支払いの5原則
労働基準法第24条は、会社が労働者に賃金を支払うときのルールとして、次の5つを定めています。
- 通貨払い
賃金は現金(日本円)で支払う - 直接払い
賃金は労働者本人に支払う - 全額払い
税金・社会保険料など法令で認められたものや、労使協定で決めたもの(寮費など)以外を差し引かない - 毎月1回以上払い
少なくとも毎月1回は支払う - 一定期日払い
「毎月25日」のように支払日を決めて支払う
通貨払い・直接払いの原則から分かるとおり、現金を本人に手渡すのが本来の形です。違反した会社には、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科されることがあります。
口座振込には派遣社員本人の同意が必要
銀行口座への振込は、通貨払いの原則の例外として認められている支払い方です。労働基準法施行規則第7条の2により、会社は労働者の同意を得た場合にかぎり、労働者が指定する銀行口座などへ賃金を振り込めます。
派遣登録や雇用契約のときに振込先の口座を届け出る手続きが、同意にあたります。振込が一般的になっているのは、あなたが口座を指定して同意しているからです。
派遣の給料が口座振込中心なのは事務負担と防犯のため
手渡しは法律上可能でも、派遣会社の多くは口座振込だけに対応しています。派遣会社が給料を手渡ししない理由は、派遣社員の人数の多さと、現金を扱うことによる負担とリスクにあります。
派遣社員の人数が多く現金の準備が負担になる
派遣会社は、多くの派遣社員に同じ日に給料を支払います。一人ひとりの給料を現金で用意して封筒に分け、本人に確実に渡すのは、事務の手間も時間も大きくかかります。派遣社員が働く場所もばらばらで、全員に手渡す場を設けること自体が現実的ではありません。
現金の手渡しは紛失・盗難のリスクがある
現金を持ち運ぶ以上、紛失や盗難のリスクは避けられません。受け渡しの記録も残りにくく、「受け取った」「受け取っていない」の食い違いが起きたときに確認が難しくなります。口座振込なら支払いの記録が銀行に残るため、派遣会社と派遣社員の双方にとって安心です。
派遣会社が用意した給料を、派遣先の担当者があなたに手渡すことは、単に手渡すだけであれば直接払いの原則に違反しないとされています(昭和61年6月6日付け基発第333号)。この場合も、給料を支払っているのはあくまで派遣会社です。

派遣の給料を早く受け取る方法
派遣の給料を手渡しで受け取りたい理由が「早く現金がほしい」ということなら、手渡しにこだわらなくても方法はあります。派遣会社の制度や法律の定めを使えば、給料日を待たずに受け取れる場合があります。
派遣会社の日払い・週払い・前払い制度
派遣会社の中には、働いた分の給料の一部を、給料日より前に受け取れる前払い制度を設けているところがあります。申請すると口座に振り込まれる仕組みが多く、手数料がかかる場合や、受け取れる上限額が決まっている場合もあります。
前払い制度の有無や条件は、派遣会社ごとにさまざまです。登録のときに、前払いに対応しているか、手数料はいくらかを確認しておきましょう。
出産・病気などの非常時払い
出産・病気・災害などの費用にあてるために請求した場合、会社は給料日前でも、すでに働いた分の給料を支払わなければなりません。労働基準法第25条が定める非常時払いで、派遣社員も派遣会社に請求できます。
派遣の給料のデジタル払い
2023年4月から、給料をスマートフォン決済アプリなどの口座で受け取る「デジタル払い」も認められるようになりました。派遣の給料でも、派遣会社が制度を導入していれば選べます。
デジタル払いを利用できる条件
デジタル払いで給料を受け取れるのは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座に限られます。2024年8月にPayPay株式会社が初めて指定を受け、その後も指定を受ける事業者が増えています。
派遣会社がデジタル払いを導入するには、労働組合または労働者の過半数代表者と労使協定を結ぶことが必要です。そのうえで、あなたが個別に同意した場合にだけ、デジタル払いで受け取れます。派遣会社は、希望しない労働者にデジタル払いを強制できません。
デジタル払いの口座は貯金に向かない
デジタル払いの口座は、支払いや送金に使うためのものです。口座残高には上限があり、上限を超えた分はあらかじめ指定した銀行口座などへ自動で移される仕組みになっています。給料の全額ではなく、日々の支払いに使う分だけをデジタル払いで受け取る使い方が向いています。
参考:労働者の方向け 賃金のデジタル払いについて(厚生労働省)
派遣の給料の手渡しを求められたときの確認点
派遣会社から、口座振込ではなく手渡しでの受け取りを求められることもあります。手渡しそのものは違法ではありませんが、振込が主流の中であえて手渡しにしている派遣会社には、念のため次の点を確認しておきましょう。
派遣事業の許可を受けているか
労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です。許可を受けた派遣会社には「派13-000000」のような許可番号があり、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で検索できます。許可番号が見当たらない会社からの仕事は受けないようにしてください。
給与明細と源泉徴収が適正か
手渡しでも、給与明細は必ず受け取りましょう。所得税の源泉徴収や社会保険料の控除が明細に正しく記載されているかを確認してください。明細が出ない、控除の内訳が分からないといった場合は、年末の源泉徴収票や社会保険の加入状況にも問題がないか、派遣会社に確認しましょう。

派遣社員の給料は手渡しできるかまとめ
派遣社員の給料を手渡しで受け取ることは、労働基準法上は可能です。ただ、派遣会社の多くは、派遣社員の同意を得たうえでの口座振込を採用しており、手渡しに対応している派遣会社はごく一部です。
早く給料を受け取りたいなら、手渡しにこだわるより、派遣会社の前払い制度や、2023年4月に解禁されたデジタル払いを検討してみましょう。口座の準備が間に合わないといった事情があるときも、まずは派遣会社の営業担当に相談すれば、受け取り方の選択肢を教えてもらえます。
給料の支払いがきちんとしている派遣会社を選ぶことが、安心して働き続けるための第一歩です。登録先に迷ったら、実績のある大手派遣会社から検討してみてください。
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