「派遣会社から就業条件明示書が届いたけど、どこを見ればいいのか分からない…」
派遣で働き始めるとき、派遣会社からは就業条件明示書や労働条件通知書など、似た名前の書類がいくつも渡されます。書かれている項目が多く、つい読み飛ばしてしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、就業条件明示書とは何か、いつどのように交付されるのか、労働条件通知書とどう関係するのかを解説します。2024年4月から追加された明示事項、書かれている項目の読み方、明示された内容と実際の仕事が違うときの対応も紹介します。


就業条件明示書とは?
就業条件明示書とは、派遣会社が派遣社員に対して、派遣先での業務内容・就業場所・就業時間などの就業条件を明示する書類です。労働者派遣法第34条にもとづき、派遣会社が派遣を始める前に交付します。
就業条件明示書に書かれた内容と、事前に聞いていた説明が違うことも起こりえます。部署や仕事内容、就業時間が説明と違っていないかを、派遣先で働き始める前に確認しておきましょう。
とくに見落としやすいのが抵触日です。抵触日は、同じ職場で派遣として働ける期限を示す日付で、抵触日を把握しているかどうかで、3年後に選べる道が変わります。
就業条件明示書を交付するのは派遣会社
派遣会社は、労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ派遣社員に就業条件を明示しなければなりません。労働者派遣法第34条第1項が派遣会社に課している義務で、派遣先ではなく、あなたを雇用している派遣会社が明示します。
明示の方法を定めているのは、労働者派遣法施行規則第26条です。原則は書面の交付で、あなたが希望した場合にかぎり、ファクシミリや電子メール等で受け取ることもできます。派遣の開始が急で事前に書面を渡せない場合は、先に口頭などで伝えたうえで、派遣期間が1週間を超えるときやあなたが請求したときに、派遣開始後遅滞なく書面等で明示する決まりです。
参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索)
就業条件明示書と労働条件通知書の関係
派遣社員は、就業条件明示書のほかに、派遣会社から労働条件通知書も受け取ります。2つの書類は根拠となる法律が違い、1枚の「労働条件通知書兼就業条件明示書」として交付されることもよくあります。
労働条件通知書は派遣会社との雇用契約の条件
労働条件通知書は、雇用主が労働契約を結ぶときに、賃金・労働時間・契約期間などを明示する書類です。労働基準法第15条がすべての雇用主に明示を義務づけており、派遣社員の場合は雇用主である派遣会社が明示します。
就業条件明示書が「派遣先でどう働くか」を示すのに対し、労働条件通知書は「派遣会社とどんな条件で雇用契約を結ぶか」を示します。派遣会社の多くは両方の項目を1枚にまとめて交付しているため、手元の書類のタイトルを確認してみましょう。
2024年4月から追加された労働条件の明示事項
2024年4月1日から、労働基準法施行規則第5条の改正により、労働条件通知書で明示する項目が増えました。派遣会社があなたと雇用契約を結ぶとき、また有期の雇用契約を更新するときにも、次の項目が明示されます。
- 就業場所・業務の変更の範囲
雇い入れ直後の就業場所・業務に加え、雇用契約の期間中に変わる可能性がある範囲 - 更新上限の有無と内容
有期の雇用契約で、通算の契約期間や更新回数に上限がある場合はその内容 - 無期転換の申込みの機会と転換後の労働条件
同じ派遣会社との有期契約が通算5年を超え、無期転換を申し込めるようになる更新のタイミングで明示
派遣社員の場合、就業場所・業務の変更の範囲は、派遣会社との雇用契約の中で派遣先や業務が変わりうる範囲として書かれます。就業条件明示書に書かれる今回の派遣先の就業場所と、労働条件通知書に書かれる変更の範囲は、別の項目として読み分けましょう。
参考:2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(厚生労働省)
派遣会社による待遇の説明
派遣会社は、あなたを派遣社員として採用しようとする段階、雇い入れるとき、実際に派遣するときのそれぞれで、待遇について説明しなければなりません。労働者派遣法第31条の2が定める派遣会社の義務で、採用前には賃金の見込み額を、雇入れ時と派遣時には派遣先の社員との不合理な待遇差をなくすための措置の内容を説明します。
派遣先の社員との待遇の違いについて、内容と理由の説明を求めることもできます。説明を求めたことを理由に派遣会社が不利益な取扱いをすることは、同じ第31条の2で禁じられています。
派遣社員の就業条件明示書に書かれている内容
派遣社員の就業条件明示書には、労働者派遣法第34条と第26条が定める派遣特有の項目が並びます。項目は大きく分けて、就業条件に関する記載、派遣先に関する記載、派遣元に関する記載の3つです。
就業条件に関する記載
就業条件の欄には、派遣先であなたが担当する仕事と、働く日・時間・期間が書かれています。派遣社員の就業条件明示書の中で、最もよく見返すことになる部分です。
- 業務内容
派遣先で担当する仕事の内容。記載のない仕事を指示されたときは、派遣会社に相談できます。 - 就業日・就業時間
出勤日・シフト、始業・終業の時刻、休憩時間。派遣就業する日が具体的に記載されます。 - 残業・休日出勤の有無
時間外労働・休日労働をする場合の日数や時間数の上限。 - 派遣期間
就業開始日から終了日まで。 - 安全及び衛生
派遣先での安全管理や健康管理に関する事項。 - 契約解除の場合の措置
派遣契約が途中で解除されたときに派遣会社が講じる措置。新たな就業機会の確保や休業手当の支払いなど。 - 紹介予定派遣である場合はその旨及びその条件
- 抵触日
派遣先の事業所単位の抵触日と、同じ課などの組織単位で働ける期限(個人単位の抵触日)の2つ。
時給や給与の支払日は、労働条件通知書の項目として同じ書面に記載されるのが一般的です。派遣料金の額も、労働者派遣法第34条の2により、派遣会社から明示されます。
派遣先に関する記載
派遣先の欄には、派遣社員が働く場所と、派遣先で指示や相談の窓口になる人が書かれています。初出勤の前に、誰に何を聞けばよいかを確認しておきましょう。
- 就業場所
派遣先の事業所の名称・所在地と、配属される部署や課などの組織単位。 - 指揮命令者
派遣先であなたに仕事の指示を出す人。 - 派遣先責任者
派遣先で派遣社員の就業を管理する責任者と、その連絡先。 - 福利厚生施設の利用等
派遣先の社員が利用している食堂・休憩室・更衣室などの施設や、制服の貸与に関する内容。 - 苦情の申出先
派遣先での仕事の進め方や人間関係について、苦情を申し出る窓口。
派遣元に関する記載
派遣元の欄には、派遣会社側の責任者と苦情の窓口が書かれています。営業担当に言いにくいことがあるときの相談先として、派遣会社側の窓口も把握しておくと安心です。
- 派遣元責任者
派遣元責任者講習を受講した人の中から、派遣会社が選任した責任者。 - 苦情の申出先
派遣会社の担当営業などについて、苦情を申し出る派遣会社側の窓口。

就業条件明示書と実際の仕事が違うときの対応
就業条件明示書に書かれた業務内容や就業時間と、派遣先で実際に指示される仕事が違う場合は、ひとりで抱え込まずに対応しましょう。派遣先と直接交渉するのではなく、派遣会社を通して解決するのが基本です。
派遣会社の営業担当に相談する
就業条件明示書にない仕事を頼まれた、残業が明示された上限を超えている、といったときは、まず派遣会社の営業担当に伝えましょう。派遣会社は派遣先に対して契約内容を守るよう求める立場にあり、必要に応じて派遣先と調整してくれます。
相談するときは、いつ・誰から・どんな指示を受けたかをメモしておくと、話がスムーズに進みます。あなたが手元の就業条件明示書と照らし合わせて、どの項目と違うのかを示せれば、営業担当にもいっそう伝わりやすいでしょう。
派遣会社で解決しないときは労働局に相談する
派遣会社に相談しても改善されない場合は、都道府県労働局の需給調整事業部門(需給調整事業室など)に相談できます。労働者派遣法にもとづく派遣会社・派遣先の指導を担当している窓口で、相談は無料です。

就業条件明示書まとめ
就業条件明示書は、派遣会社が派遣を始める前にあなたへ交付する、派遣先での働き方を示した書類です。業務内容・就業時間・就業場所・抵触日といった、派遣社員として働くうえで欠かせない情報がまとまった一枚です。
2024年4月からは、派遣会社との雇用契約で就業場所・業務の変更の範囲や更新上限も明示されるようになりました。労働条件通知書とあわせて読むと、今回の派遣の条件と、派遣会社との雇用契約の全体像の両方をつかめます。
面倒な調整は派遣会社に任せて構いませんが、自分の就業条件はしっかり把握しておきましょう。気になる点を派遣会社に早めに質問できる人ほど、派遣先で安心して長く働けます。












