「グループ会社の派遣会社に登録したら、親会社で働けるって本当?8割規制ってなに?」
大手企業のグループには、グループ内の会社に派遣社員を送り出すことを主な仕事にしている派遣会社があります。「グループ派遣」と呼ばれる働き方で、派遣会社がグループ企業に派遣できる割合には、労働者派遣法で上限が決められています。上限が8割であることから、一般に「8割規制」と呼ばれるルールです。
この記事では、8割規制の中身と目的、専ら派遣との違い、関係派遣先(グループ企業)の範囲や割合の計算方法、派遣会社の報告義務を解説します。グループ系の派遣会社で働くときに確認しておきたいポイントも紹介します。


8割規制はグループ企業への派遣を8割以下にする決まり
8割規制は、グループ企業への派遣を禁止するものではなく、派遣の割合に上限を設ける決まりです。
8割規制とは、派遣会社がグループ企業(関係派遣先)に派遣する割合を、全体の8割以下に抑えなければならないという決まりです。8割規制は、2012年10月1日に施行された労働者派遣法の改正で、第23条の2として設けられました。
派遣会社は、経営を実質的に支配できる関係にある会社など、厚生労働省令で定める関係派遣先に労働者派遣をするときは、関係派遣先への派遣割合を80%以下にしなければならない。
8割規制の目的
大手企業のグループ企業に派遣されれば、憧れのグループで長く働けるチャンスかもしれないのに、なぜ割合を制限する必要があるのでしょうか。直接雇用を望んでいるわけではなく、ただ好きな企業グループで働きたいと思っている方も多いでしょう。
労働者派遣は、本来は企業の一時的・臨時的な人手の需要に、派遣会社が幅広く労働者を送り出すための仕組みです。グループ企業への派遣ばかりになると、派遣会社がグループの人件費を抑えるための「第二人事部」のようになり、本来は社員として雇われるはずの仕事が派遣に置き換わってしまうおそれがあります。
とはいえ、グループ内の派遣をすべて禁止すると、グループで働きたい派遣社員の雇用の機会や選択の余地まで奪ってしまいます。グループ企業への派遣を認めたうえで、割合に上限を設けたのが8割規制です。
8割規制と専ら派遣の違い
8割規制とよく並べて語られるのが、専ら派遣の禁止です。どちらも特定の会社への派遣に偏ることを防ぐルールですが、根拠や対象が違います。
| 項目 | 専ら派遣の禁止 | 8割規制 |
|---|---|---|
| 対象 | 特定の者だけに派遣することを目的とした派遣事業 | グループ企業(関係派遣先)への派遣 |
| 基準 | 派遣先を特定の者に限る目的があるか | グループ企業への派遣割合が8割以下か |
| 主な根拠 | 労働者派遣法第7条第1項第1号(許可の基準) | 労働者派遣法第23条の2 |
専ら派遣は派遣事業の許可の段階で問題になるのに対して、8割規制はグループ企業への派遣を認めたうえで、毎年の実績で割合を確認するルールです。
8割規制の関係派遣先の範囲と割合の計算方法
8割規制でいう「グループ企業」は、厚生労働省令で関係派遣先として範囲が決められています。派遣割合も、人数ではなく労働時間で計算するのが特徴です。
8割規制の関係派遣先の範囲
関係派遣先の範囲は、派遣会社が親会社の連結決算の対象(連結子会社)かどうかで判断の仕方が変わります。
| 派遣会社の状態 | 関係派遣先 | 親子関係の判断 |
|---|---|---|
| 連結子会社の場合 | 派遣会社の親会社、親会社の子会社 | 連結決算の範囲で判断 |
| 連結子会社でない場合 | 派遣会社の親会社等、親会社等の子会社等 | 議決権の過半数の所有や、資本金の過半の出資などの外形で判断 |
8割規制の派遣割合の計算方法
派遣割合は、1つの事業年度の派遣社員の総労働時間をもとに計算します。計算式は次のとおりです。
(全派遣労働者の関係派遣先での総労働時間 - 60歳以上の定年退職者の関係派遣先での総労働時間)÷ 全派遣労働者の総労働時間
60歳以上の定年退職者は、8割規制の対象外とされています。60歳以上の定年退職者がグループ企業で働いた時間は、計算式の分子から差し引きます。
出典元:グループ企業内派遣の8割規制について(厚生労働省 労働政策審議会資料)
8割規制に対する派遣会社の報告義務と違反時の対応
8割規制を守っているかどうかは、派遣会社が毎年国に報告する仕組みで確認されています。派遣会社が報告を怠る、割合を超えたまま改めない、といった場合は、行政からの指導などの対象になります。
関係派遣先派遣割合報告書の提出
派遣会社は、事業年度ごとに関係派遣先への派遣割合を厚生労働大臣に報告しなければなりません(労働者派遣法第23条第3項)。報告は「関係派遣先派遣割合報告書」という書類で、事業年度が終わってから3か月以内に、管轄の都道府県労働局を通じて提出します。
8割規制に違反したときの行政の対応
派遣割合が8割を超えている派遣会社には、厚生労働大臣(都道府県労働局)が指導・助言を行い、改善されなければ是正の指示を行います。派遣割合が8割を超えている派遣会社や、割合の報告をしない派遣会社には、厚生労働大臣(都道府県労働局)が指導・助言を行い、それでも改善されなければ是正の指示を行います。指示を受けてもなお違反を続けた場合に、派遣事業の許可の取消しの対象になります(労働者派遣法第14条第1項第4号・第48条第3項)。派遣社員のあなたが罰せられることはありません。派遣社員のあなたが罰せられることはありません。
8割規制のあるグループ系派遣会社の良さと注意点
8割規制があるとはいえ、グループ系の派遣会社では派遣先の多くがグループ企業になります。グループ系の派遣会社に登録する前に、次のポイントを確認しておきましょう。
グループ系派遣会社のメリット
グループ系の派遣会社は、親会社やグループ企業との結びつきが強く、グループ内の仕事を安定して紹介してもらえるのが魅力です。親会社の業界や社風が好きで、親会社のグループで働きたいという気持ちがはっきりしているなら、グループ系の派遣会社は有力な選択肢になります。
グループ系派遣会社で確認したい注意点
正直なところ、元派遣営業の立場から見ると、グループ系の派遣会社には、グループ外の取引先が少なく紹介できる仕事の幅が狭い会社や、派遣社員の研修やキャリア相談の体制がまだ整っていない会社もあります。もちろん、すべてのグループ系派遣会社がそうではありません。登録の前に、次の点を確認しておくと安心です。
- グループ外の取引先がどのくらいあるか
- スキルアップ研修やキャリア相談の制度があるか
- 派遣先での直接雇用の実績があるか
- 契約が終わったとき、次の仕事をどの範囲から紹介してもらえるか
特定のグループで働きたいという強い思いがない場合や、初めて派遣で働く方は、取引先の多い大手の派遣会社にも並行して登録しておくと、仕事の選択肢が広がります。

8割規制とグループ派遣のまとめ
8割規制は、派遣会社がグループ企業に派遣する割合を8割以下に抑える決まりで、グループ派遣そのものを禁止するものではありません。関係派遣先の範囲は親子関係で決まり、割合は60歳以上の定年退職者を除いた総労働時間で計算します。派遣会社は毎年割合を報告する義務を負い、違反を続ければ許可の取消しの対象です。
グループ系の派遣会社には、グループ内の仕事を安定して紹介してもらえる良さがあります。一方で、紹介される仕事の幅や研修の体制は会社によって差があるので、登録の前に確認しておくことが大切です。働きたい会社への思いと、これからのキャリアの両方を考えながら、あなたに合った派遣会社を選んでいきましょう。














