「寝坊して無断欠勤しちゃった…派遣会社から解雇されたらどうしよう」
派遣先からも派遣会社からも着信が何件も入っていると、怖くて折り返せなくなる気持ちはよく分かります。ただ、派遣社員の解雇は、派遣会社が思い立ったらすぐにできるものではありません。解雇には法律上の要件があるうえ、無断欠勤のあとの対応しだいで結果が変わることもあるでしょう。
この記事では、派遣社員が解雇・追放の宣告を受ける可能性がある事由と、解雇に必要な法律上の要件、契約途中終了・雇止め・解雇の違いを解説します。あわせて、無断欠勤してしまったときの対応と、解雇された場合の失業給付についても取り上げます。


派遣社員が解雇・追放される可能性がある事由
派遣社員が解雇・追放される可能性がある事由は、大きく分けて派遣先での勤務態度の問題、就業中の不祥事や違反行為、派遣会社の就業規則違反の3つです。
派遣社員を雇用しているのは派遣先ではなく派遣会社です。派遣先で問題が起きれば、派遣会社は雇い主として派遣先に説明し、対応する立場になります。派遣会社にとって、派遣先との信用はビジネスの土台です。そのため、信用を大きく損なう行動があると、派遣会社は派遣社員との契約を見直さざるを得なくなります。
派遣会社から解雇されると、派遣会社によっては社内で「今後は紹介を控える」という扱いになり、同じ派遣会社から仕事を紹介してもらえなくなることがあります。いわゆる派遣会社のブラックリストです。
なお、派遣先の都合で契約が終わる「派遣切り」は、本記事で取り上げる解雇・追放とは別のものです。派遣切りについて知りたい方は、次の記事をご覧ください。
解雇は正社員でも起こり得るもので、派遣社員だけが厳しく扱われるわけではありません。派遣社員の場合、具体的には次のような事由が解雇・追放につながる可能性があります。
派遣先での勤務態度の問題
遅刻・欠勤・早退・居眠りを繰り返すなど、派遣先での勤務態度に問題がある場合です。派遣会社の営業担当は、あなたの働きぶりを毎日見ているわけではありません。そのため、派遣先の派遣先責任者や指揮命令者から寄せられる報告をもとに、派遣会社は対応を判断します。
1回の遅刻でいきなり解雇されることは、まずありません。注意を受けても改善されない、連絡なしの欠勤が続く、といった積み重ねが問題になります。
就業中の不祥事や違反行為
派遣先の情報を無断で持ち出す、SNSに派遣先の内部情報を書き込む、備品や金銭を私物化する、同僚へのハラスメントを行う、といった行為です。派遣先に損害や迷惑を与える行為は、1回でも重い処分の対象になり得ます。
派遣会社の就業規則違反
派遣会社には就業規則があり、懲戒処分の対象になる行為と処分の種類が定められています。経歴の重大な詐称や、派遣会社に禁止されている行為を続けた場合は、就業規則にもとづく懲戒の対象になります。どんな行為が対象かは、登録時や就業前に受け取る書類や、派遣会社のマイページで確認しておきましょう。

派遣社員の解雇に必要な法律上の要件
派遣会社が派遣社員を解雇するには、法律上の要件を満たす必要があります。まずは、よく混同される契約途中終了・雇止め・解雇の違いを整理しておきましょう。
| 終わり方 | どんな場合か | 主なルール |
|---|---|---|
| 契約途中終了 | 派遣先が派遣会社との派遣契約を途中で解除する | 派遣会社との雇用はすぐには終わらず、派遣会社は次の仕事を探す |
| 雇止め | 契約満了のタイミングで派遣会社が更新しない | 3回以上更新または通算1年超なら30日前までに予告 |
| 解雇 | 派遣会社があなたとの労働契約を一方的に終わらせる | 合理的な理由が必要。有期契約の途中ならやむを得ない事由が必要 |
解雇には客観的に合理的な理由が必要
派遣会社があなたを解雇できるのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合だけです。労働契約法第16条は、要件を欠く解雇を権利の濫用として無効と定めています。1回のミスや軽い遅刻を理由に、注意や指導もないまま解雇するのは、社会通念上相当とはいえない可能性が高いでしょう。
契約期間の途中の解雇はやむを得ない事由が必要
登録型派遣のように期間を定めた労働契約の場合、派遣会社が契約期間の途中で解雇できるのは、やむを得ない事由がある場合に限られます(労働契約法第17条第1項)。期間の途中の解雇は、期間の定めのない契約の解雇よりも厳しく判断されます。
解雇予告は30日前まで
派遣会社があなたを解雇するときは、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払わなければなりません(労働基準法第20条)。
例外の1つが、あなたの責任で解雇する場合に、派遣会社が労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けたときです。行政の認定基準では、原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合などが例に挙げられています。1日の無断欠勤で予告なしに解雇されることは、通常は考えにくいといえます。
無断欠勤してしまった派遣社員が解雇を避けるための対応
無断欠勤してしまっても、その後の対応で派遣会社の受け止め方は大きく変わります。解雇や追放を避けるために、派遣社員のあなたが取るべき行動を順に紹介します。
派遣会社の営業担当にすぐ電話する
連絡が遅れるほど、派遣会社と派遣先の不安は大きくなります。着信に気づいたら、まずは派遣会社の営業担当に電話しましょう。気まずくても、メッセージだけで済ませず声で謝るほうが誠意は伝わります。営業担当につながらないときは、派遣会社の代表番号に連絡して伝言を頼みましょう。
欠勤の理由と次の出勤日を伝える
寝坊なら寝坊と正直に伝え、次の出勤日と再発防止策(目覚ましを2つにする、前日は早く寝る等)を話しましょう。体調不良が原因なら、受診した結果も伝えます。取り繕った理由は後で食い違いが出やすく、かえって信用を落とします。
派遣先へのお詫びは営業担当と相談
派遣先への連絡は、派遣会社の営業担当がすでに対応していることが多いものです。自分から派遣先に直接連絡する前に、営業担当にどう謝るのがよいか相談しましょう。次の出勤日には、派遣先の上司に一言お詫びを伝えると、職場の空気も和らぎます。

派遣社員が解雇された場合の失業給付
万一、派遣会社から解雇された場合でも、雇用保険に加入していれば失業給付(基本手当)を受け取れる可能性があります。解雇の理由によって、給付が始まるまでの期間が変わります。
重責解雇は給付制限3か月
横領や重大な経歴詐称、長期の無断欠勤など、あなたの責任が重い理由による解雇は「重責解雇」と呼ばれます。重責解雇の場合、失業給付には7日間の待期のあとに3か月の給付制限がつきます。正当な理由のない自己都合退職の給付制限が2025年4月から原則1か月に短くなったのと比べると、重責解雇の給付制限は2か月長い計算です。
重責解雇でない解雇は給付制限なし
重責解雇にあたらない解雇は、ハローワークで特定受給資格者と判断され、給付制限はつきません。離職票に書かれた離職理由に納得できないときは、ハローワークで異議を申し立てることができます。
出典元:「給付制限期間」が1か月に短縮されます(岩手労働局・ハローワーク)
大手派遣会社からの解雇・追放は避けたい
派遣会社から解雇・追放されても、ほかの派遣会社に登録すれば仕事を紹介してもらえることは多いものです。派遣会社が登録者の情報をほかの会社に渡すことは個人情報保護法で原則として制限されており、派遣会社同士で「解雇した人のリスト」を共有する仕組みがあるわけではありません。
それでも、「追放されても別の派遣会社に登録すればいい」と考えていると、登録できる派遣会社は少しずつ減っていきます。特に求人数の多い大手の派遣会社で信用を失うと、紹介してもらえる仕事の幅が大きく狭まってしまいます。派遣で長く働くなら、大手の派遣会社との信頼関係は大事にしたいところです。

派遣社員が解雇・追放される事由のまとめ
派遣社員が解雇・追放される可能性があるのは、勤務態度の問題が積み重なった場合や、就業中の不祥事、派遣会社の就業規則違反などです。一方で、派遣会社が派遣社員を解雇するには合理的な理由が必要で、契約期間の途中ならやむを得ない事由まで求められます。1回の寝坊や無断欠勤で、すぐに解雇が決まるわけではありません。
大切なのは、失敗したあとの対応です。無断欠勤してしまったら、気づいた時点で派遣会社に連絡し、正直に理由を話して次の出勤日を伝えましょう。誠実に対応すれば、派遣会社や派遣先との信頼関係は立て直せます。今日の失敗を次に活かして、安心して働ける毎日を取り戻していきましょう。









