「事務職ってAIでなくなるって本当?派遣で事務をしている私、この先も仕事があるのかな」
ニュースやSNSで「AIに奪われる仕事」の話題を見るたびに、事務職を続けていて大丈夫なのか不安になる方は多いはずです。特に派遣で事務の仕事をしていると、正社員より先に影響を受けるのではないかと心配になるものです。
この記事では、事務職がAIでなくなるのか、事務職に将来性はあるのかという疑問に、公的機関や研究機関が公表している数字をもとに答えます。そのうえで、AIに置き換わりやすい事務作業と事務職に残る仕事、正社員にも派遣社員にも同じように及ぶAIの影響、派遣会社が始めている派遣スタッフ向けの生成AI研修、事務職の派遣社員が今から始められる準備を解説していきます。



事務職はAIでなくなる?
事務職という職種がAIで丸ごとなくなる可能性は、現時点では低いと考えられます。一方で、事務職が担当してきた作業のうち、決まった手順で繰り返す定型作業はAIに置き換わり始めています。事務職の将来性を考えるときは、「職種が残るか」と「自分の担当作業がAIに奪われないか」を分けて見ることが大切です。
事務職という職種は残る見通し
事務職の仕事は、書類の作成や入力だけではありません。社内外からの問い合わせに相手の事情をくみ取って答える、部署同士の予定を調整する、上司の判断に必要な資料をそろえるなど、人と人の間に立つ仕事も多く含まれています。会社が動いている限り、こうした調整や確認を担う人は必要です。
ニュースでよく見る「日本の労働人口の49%がAIに置き換わる」という数字も、野村総合研究所が2015年に、技術的に代替できる可能性を試算したものです。事務職という職種が消える時期を予測した数字ではありません。
AIに置き換わる事務の定型作業
AIに置き換わり始めているのは、事務職の仕事の中でも定型作業と呼ばれる部分です。定型作業とは、手順とルールが決まっていて、誰がやっても同じ結果になる作業を指します。データの入力、紙の書類からシステムへの転記、決まった書式の文書作成、会議の議事録の下書きなどが代表例です。
文章や表を自動で作る生成AIは、定型作業を人より速く、疲れずにこなせます。事務職の人が1日の多くの時間を定型作業に使っている職場では、会社がAIを導入し、事務職の人数を減らすと判断する可能性があります。事務職そのものは残っても、事務職の募集人数が今より絞られていくことは、事務職で働く人全員が意識しておきたい変化です。
事務職の求人はもともと狭き門
事務職は、何年も前から求人より仕事を探す人のほうが多い職種です。厚生労働省の一般職業紹介状況によると、仕事を探す人1人あたりに何件の求人があるかを示す有効求人倍率(常用・パートを含む原数値)は、2026年7月時点で職業全体の1.05倍に対して、事務従事者は0.36倍、一般事務従事者は0.29倍でした。2023年の年平均でも、職業全体の1.19倍に対して事務従事者は0.45倍で、事務職の求人の少なさは今に始まったことではありません。一般事務の仕事を探す人およそ3~4人に対して、求人が1件という計算になります。
なお、有効求人倍率はハローワークを通じた求人と求職だけを集計した数字なので、派遣会社や求人サイトの求人は含まれていません。それでも、事務職が人気の高い職種で、採用の競争が激しい状況は派遣の現場でも同じです。AIによる定型作業の置き換えが進めば、事務職の採用は「AIでは代わりにくい仕事ができる人」を選ぶ方向に進むと考えられます。
出典元:一般職業紹介状況(令和8年7月分)について(厚生労働省)
事務職のAI代替に関する調査の数字
「事務職の◯割がAIに置き換わる」と紹介される数字は、技術的に置き換えが可能かどうかを試算したもので、その割合の人が仕事を失うという予測ではありません。事務職とAIの話題でよく引用される2つの試算と、日本企業で生成AIの導入がどこまで進んでいるかを示す調査を取り上げ、それぞれの数字が何を表しているかを解説します。
野村総合研究所の49%は技術的な代替可能性
「日本の労働人口の49%がAIに置き換わる」という数字の出どころは、野村総合研究所が2015年12月2日に発表した試算です。野村総合研究所は、英オックスフォード大学の研究者と共同で国内601種類の職業を分析し、次のように発表しました。
引用文の「それら」は、人工知能やロボット等を指しています。
同じ発表の中で、野村総合研究所は49%という数字に2つの限定を付けています。1つは、数字が「技術的に」代替できる可能性を示したもので、労働需給などの社会環境の要因は考慮していないことです。もう1つは、1人の仕事のすべてをコンピューターが代わりにこなせる確率が66%以上の職業だけを数えており、仕事の一部分だけが置き換わる可能性は検討していないことです。
野村総合研究所が代替できる可能性が高い職業として公表した100種の中には、一般事務員、経理事務員、医療事務員、貿易事務員、受付係、データ入力係などの事務系の職業が含まれています。他者との協調や説得、交渉、サービス志向性が求められる職業は代替が難しい傾向にある、とも発表されています。ただ、人と接する受付係も代替できる可能性が高い側に入っているように、試算は職業を丸ごと評価したものです。事務職の中でどの作業が人に残るかは、職業名ではなく作業ごとに見る必要があります。
引用元:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に(野村総合研究所)
702はオックスフォード大学が分析した職種の数
日本の労働人口の49%が代替可能とした野村総合研究所の試算のもとになったのが、オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイ博士とマイケル・A・オズボーン准教授による2013年の論文「The Future of Employment」です。論文はアメリカの702の職種を分析し、アメリカの雇用の約47%が「高リスク」、つまり今後10~20年ほどのうちに自動化されうる職種にあたると推計しました。
「702の職種がAIでなくなる」と紹介されることがありますが、702は分析した職種の数で、なくなる職種の数ではありません。論文の著者自身も、実際に自動化される仕事の数を推計しようとはしていない(We make no attempt to estimate the number of jobs that will actually be automated)と明記しています。
論文の付表では、一般的な秘書・事務補助や受付、簿記・会計の事務員に、自動化の確率として0.96~0.98という高い値が付いています。事務職に高い値が付いたことは事実ですが、値は「技術的に自動化しうるか」を表すもので、職場から事務職がいなくなる時期を表すものではありません。
引用元:The Future of Employment(University of Oxford, Oxford Martin School)
日本企業の生成AI導入は拡大の途中
文章や表を自動で作る生成AIは、ここ数年で日本の職場にも急速に広がっています。総務省の情報通信白書(令和8年版)によると、勤めている会社が生成AIを「積極的に活用する」または「領域を限定して利用する」方針だと答えた日本の従業員は68.9%で、前年の49.7%から大きく増えました。ただし、アメリカ(82.8%)やドイツ(82.2%)と比べると、日本企業の導入はまだ途中の段階です。
生成AIの導入が進むなかで、事務職の働き方は、AIを使って作業を速く終わらせ、空いた時間で別の仕事を担う形へ変わり始めています。変化の途中である今のうちに、AIを使う側の経験を積んでおくことが、事務職で働き続けるための準備になります。
出典元:令和8年版 情報通信白書 企業における生成AIの活用方針(総務省)


AIに置き換わりやすい事務作業と事務職に残る仕事
同じ事務職でも、担当している作業によって、AIから受ける影響の度合いはかなり違うのが実情です。手順の決まった定型作業ほどAIに置き換わりやすく、人と関わる仕事や状況に応じた判断が必要な仕事ほど事務職に残ります。事務職の職種ごとの違いも、表で整理しました。
AIに置き換わりやすい事務作業
AIに置き換わりやすいのは、手順が決まっていて、判断をほとんど必要としない事務作業です。
- データの入力、紙の書類やメールからシステムへの転記
- 決まった書式の文書やメールの作成
- 会議の議事録の下書き
- 売上や勤怠などの数字の集計、定型のレポート作成
- よくある問い合わせへの一次回答
総務省の情報通信白書(令和8年版)によると、日本企業で生成AIを活用している業務として「議事録・メール作成補助」を挙げた割合が約7割で、ほかの業務より高い結果でした。導入の効果を実感している割合も、議事録・メール作成補助が約7割と際立っています。事務職が日常的に担ってきた文書作成の作業から、AIの活用が広がっていることが分かります。
出典元:令和8年版 情報通信白書 企業における生成AIの業務利用(総務省)
事務職に残る仕事
事務職に残るのは、人と関わる仕事と、状況に応じた判断が必要な仕事です。
- 部署や取引先との日程・条件の調整
- ルールに当てはまらない例外的な処理の判断
- 電話や来客への対応、相手の意図をくみ取った問い合わせ対応
- AIが作った文書や集計結果の確認と修正
- 新しい業務の手順づくりや、職場へのAIツールの定着
生成AIは文書の下書きを作れても、内容が正しいかどうかの最終確認や、社内の事情をふまえた判断はできません。AIの出力を確かめて仕上げる役割は、むしろ事務職に新しく生まれている仕事です。
事務職の職種別に見たAIの影響
事務職の職種ごとに、AIに置き換わりやすい作業と残りやすい仕事を表にまとめました。どの職種にも両方の作業が含まれており、職種の名前だけでAIの影響を判断することはできません。
| 事務職の職種 | AIに置き換わりやすい作業 | 事務職に残りやすい仕事 |
|---|---|---|
| 一般事務 | データ入力、書類の作成、ファイリング | 来客・電話対応、部署内の調整 |
| 営業事務 | 見積書・請求書の作成、受注データの入力 | 取引先との納期調整、営業担当とのやりとり |
| 経理事務 | 伝票の入力、仕訳、経費精算のチェック | 例外的な処理の判断、締め作業の管理 |
| 医療事務 | レセプト(診療報酬明細書)の作成、予約管理 | 受付での患者対応、保険や制度の説明 |
| 貿易事務 | 船積み書類の作成、通関書類の入力 | 海外の取引先や物流会社との調整 |
表の「AIに置き換わりやすい作業」の列に並ぶ作業を多く担当している人ほど、AIの影響を早く受けやすくなります。反対に、「事務職に残りやすい仕事」の列に並ぶ仕事の割合を増やしていくことが、事務職で長く働くための方向性です。
事務職のAI化は正社員も派遣社員も同じ
事務職がAIの影響を受けるかどうかは、派遣か正社員かという雇用形態ではなく、担当している作業の中身で決まります。「派遣の事務は真っ先に切られる」と心配する方は多いですが、定型作業の多い事務職は、正社員でも仕事の見直しの対象です。影響の表れ方は雇用形態によって違い、正社員は異動や担当替え、派遣社員は派遣契約の業務内容の見直しという形で表れやすくなります。事務職のAI化は、事務職で働くすべての人に共通する変化です。
AIの影響は雇用形態でなく担当業務次第
企業がAIを導入するときに見直すのは、「誰が」ではなく「どの作業を」AIに任せるかです。正社員が担当していても、派遣社員が担当していても、定型作業であればAIに任せる対象になります。反対に、調整や判断が必要な仕事は、雇用形態に関係なく人が担い続ける仕事です。
派遣社員は、派遣先と派遣会社が結ぶ派遣契約に書かれた業務を担当するため、業務の一部がAIに置き換わると、派遣先と派遣会社が派遣契約の業務内容を見直すきっかけになりやすい面はあります。一方で、派遣社員は派遣会社を通じて別の職場や別の業務に移ることができ、新しい業務の経験を自分から選んで積める面もあります。
正社員の事務職も業務見直しの対象
AIによる事務作業の効率化は、正社員の事務職にも及んでいます。正社員は雇用が続く場合でも、担当していた定型作業がAIに置き換わり、別の部署への異動や新しい仕事の習得を求められることがあります。
総務省の情報通信白書(令和8年版)の個人向け調査では、「自分の仕事がAIに代替され、職を失う」という問いに「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた日本の回答者(15歳以上)が、合わせて40.0%でした。同じ調査で、「AI導入を前提とした新たなスキルを身につけなければならない」に同じように答えた人は、63.7%にのぼります。雇用形態を問わず、多くの人がAIに合わせて自分のスキルを更新する必要を感じています。
出典元:令和8年版 情報通信白書 生成AIの利用による仕事への影響(総務省)
AIを理由にした派遣契約の終了
「AIの導入で派遣切りにあうのでは」と心配になる方もいるでしょう。派遣先がAIを導入して業務が減った場合、派遣社員であるあなたへの影響は、派遣契約が契約期間の途中で解除されるのか、期間満了で更新されないのかによって変わります。
契約期間の途中で解除された場合
派遣先の都合で契約期間の途中に派遣契約が解除された場合でも、あなたと派遣会社の雇用契約は、原則としてすぐには終わりません。厚生労働大臣が派遣会社向けに出している告示「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」は、あなたに落ち度のない理由で派遣契約が途中で解除されたとき、派遣会社にまず新しい就業先を確保するよう求めています。新しい就業先を確保できない場合は、派遣会社があなたを休業させて雇用を維持し、休業手当を支払う流れです。休業手当は労働基準法第26条が会社に義務づけている手当で、休業中も平均賃金の60%以上を受け取れます。
契約期間の満了で更新されない場合
契約期間が満了したときに派遣先が更新しない、という形で業務の縮小が表れることもあります。契約が更新されないときの予兆や、更新されない場合のルールについては、次の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。


事務職のAI化に対する派遣会社の取り組み
大手の派遣会社は、登録している派遣スタッフが生成AIを事務の仕事に使えるよう、生成AIの研修を始めています。事務職のAI化は、派遣会社にとっても紹介できる仕事の中身が変わる、事業の土台に関わる変化です。受講料を無料と公表している会社もあります。派遣会社の研修の内容と、派遣先から求められ始めているAIのスキルを紹介します。
派遣スタッフ向けの生成AI研修
派遣スタッフ向けの生成AI研修は、2024年以降、大手の派遣会社で相次いで始まっています。公式に発表されている3社の研修を紹介します。受講の条件や募集の時期は変わることがあるので、申し込む前に各社の最新の案内を確認するようにしてください。
パーソルテンプスタッフ
パーソルテンプスタッフは、日本マイクロソフトのデジタル人材育成プログラム「Code; Without Barriers」を、登録スタッフに無料で提供しています。プログラムでは、Microsoft 365で使える生成AI「Copilot」の基礎知識や活用方法、生成AIへの指示の出し方(プロンプト)などを、オンラインで学べます。2024年11月に就業中のスタッフ向けに始まり、登録スタッフが対象に加わったのは2025年4月からです。
出典元:日本マイクロソフト(株)のデジタル人材育成プログラム(パーソルテンプスタッフ)
ヒューマンリソシア
ヒューマンリソシアは、2026年6月から、派遣スタッフが生成AIの使い方を実践的に学べるオリジナル研修「Gen-Pro Light(ジェンプロ ライト)」を始めました。登録している派遣スタッフは無料で受講でき、基礎編・応用編・定着編の全3回をライブ型のオンライン研修で学ぶ内容です。同じ3回1組の研修を2026年度中に5期に分けて開き、合計500名の参加を見込んでいます。
ヒューマンリソシアは研修を始めた理由として、同社の求人のうちAI関連のツールを使う案件が、2022年度以降毎年1.5倍以上に増えていることを挙げています。
出典元:派遣スタッフへの生成AI実践研修を開始(ヒューマンリソシア)
パソナ
パソナは、2024年5月から、日本マイクロソフトと連携したデジタル人材育成プログラム「Code; Without Barriers in Japan」を、パソナに登録している女性の派遣スタッフ向けに提供しています。開始時には、2025年度までに女性の派遣スタッフ1万人を育成する目標を掲げていました。マイクロソフトの生成AI「Copilot」の基礎知識や活用方法を主にオンデマンドの動画で学ぶ内容で、案内ページによると現時点で申込期限は設けられていません。受講料は公式の案内に記載がないため、申し込む前にパソナに確認しましょう。
出典元:Code; Without Barriers in Japan プログラム案内(パソナ)
派遣先から求められ始めたAIのスキル
日本人材派遣協会が2026年3~4月に会員の派遣会社などを対象に行い、141社が回答した調査では、派遣先から派遣社員に「生成AI活用スキル」が求められていると答えた派遣会社は、現状では15.6%でした。一方で、3年後には71.7%まで高まると派遣会社は予測しています。同じ調査では、データ入力や一般事務などの定型性の高い業務について、3年後には需要が減ると見込む派遣会社が多い結果でした。
派遣スタッフ向けの生成AI研修を実施している派遣会社は、同じ調査で13.5%にとどまっています。生成AIの研修を用意している派遣会社はまだ一部です。AIの研修を受けたい場合は、研修を用意している派遣会社に登録しておきましょう。
出典元:派遣会社における生成AIの事業影響と活用実態に関する調査(日本人材派遣協会)

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AI時代に事務職の派遣社員が身につけたいスキル
AI時代の事務職では、AIを使いこなして作業を速く正確に仕上げる力と、AIでは代わりにくい人と人の間に立つ力の両方が求められます。派遣先で事務職として評価されやすいスキルを、次の4つに分けて紹介します。
生成AIを事務作業に使う力
事務職の派遣社員がまず身につけたいのは、生成AIを日々の事務作業に使う力です。メールの文面の下書き、議事録の要約、長い資料の要点整理など、事務作業の多くは生成AIに指示を出すだけで下書きができます。
生成AIを使いこなすには、目的や条件を具体的に伝える指示の出し方(プロンプト)を覚えることが近道です。派遣先がMicrosoft 365を使っている場合は、ExcelやWord、Outlookの中で使える生成AI「Copilot」の操作に慣れておくと、職場ですぐに役立ちます。職場で生成AIを使うときは、派遣先が認めているツールと利用のルールを確かめてから使うようにしてください。
Excelとデータを扱う力
Excelで関数を使って集計する力や、データを並べ替えて傾向を読み取る力は、AI時代の事務職でも引き続き求められます。生成AIに集計を頼む場合でも、元のデータが正しく整っていなければ、正しい結果は返ってきません。
関数やピボットテーブルを使える人は、生成AIにExcelの作業を頼むときも、出てきた結果の誤りに気づきやすくなります。Excelのスキルは、生成AIを正しく使うための土台になります。
社内外との調整力
部署同士の予定を調整する、取引先と納期をすり合わせる、上司に確認して判断を仰ぐといった調整の仕事は、AIでは代わりにくい事務職の仕事です。相手の都合や社内の事情をくみ取りながら落としどころを探る調整は、AIに文面の下書きを任せられるようになっても、人が担う部分として残ります。
派遣社員は複数の職場を経験するなかで、職場ごとの進め方の違いに合わせる経験を積めます。職場のやり方に早くなじみ、関係者の間をつなぐ力は、派遣で事務職を続けるほど磨かれていく強みです。
AIの出力を確かめる力
生成AIは、もっともらしい文章を作れる一方で、事実と違う内容を含めてしまうことがあります。AIが作った文書や集計結果をそのまま使わず、元の資料と照らし合わせて誤りを直す力は、これからの事務職に欠かせません。
社外に出す文書や数字に誤りがあれば、派遣先の信用に関わります。AIの出力を確かめて仕上げる役割を安心して任せられる人は、派遣先から長く必要とされやすくなります。
AIに関するスキルとあわせて、MOSや日商簿記などの資格で事務職のスキルを証明したい方は、次の記事も参考にしてください。
事務職の派遣社員がAI時代に今から始める準備
事務職の派遣社員は、派遣会社の研修や営業担当への相談といった仕組みを使えるぶん、今日から始められる準備が多くあります。AI時代に事務職で働き続けるために、今日から始められる準備を順番に4つ紹介します。これから派遣で事務職を目指す方は、まず生成AIの研修がある派遣会社に登録し、講座の有無を確かめるところから始めましょう。
登録中の派遣会社にAI講座を問い合わせる
最初の準備として、登録している派遣会社に、生成AIやCopilotを学べる講座があるかを問い合わせましょう。派遣会社の研修にはオンラインで受講できるものもあり、今の派遣先で働きながら学べる場合があります。受講の条件は派遣会社や講座ごとに違うため、問い合わせるときに対象者と受講料もあわせて確認しておくと安心です。
今の派遣会社に生成AIの講座がない場合は、講座を用意している派遣会社に追加で登録するのも1つの方法です。派遣会社への登録や無料のスキルアップ講座については、次の記事で詳しく解説しています。
今の職場で使われているAIツールを知る
派遣先ですでに生成AIが導入されている場合は、どのツールを、どの業務に、どんなルールで使っているかを確認しておきましょう。派遣先によっては、社外秘の情報を生成AIに入力してはいけないなど、利用のルールを決めています。ルールが分からないまま使うと情報漏えいにつながるおそれがあるので、使う前に派遣先の担当者に確認するようにしてください。
派遣先で実際にAIツールを使った経験は、派遣会社に提出するスキルシート(職務経歴をまとめた書類)に書ける実績になります。使ったツールの名前と、どの業務に使ったかをメモに残しておけば、スキルシートにそのまま書けます。
契約更新の面談で担当業務の幅を相談する
契約更新の前に派遣会社の営業担当と面談する機会があれば、今の業務に加えて、調整や確認の業務にも関わりたいという希望を伝えてみましょう。調整や確認の業務を担当できれば、AIに置き換わりにくい経験を積めます。
派遣社員の担当業務は派遣契約で決まっているため、業務の幅を広げるには、営業担当を通じて派遣先と相談する必要があります。派遣先に直接交渉するのではなく、まず営業担当に相談するのが派遣で働くときの基本です。
事務職の中で職種の幅を広げる
一般事務だけでなく、営業事務や貿易事務、経理事務など、事務職の中で経験できる職種の幅を広げることも、AIによる変化に備える準備の1つです。経験した職種が増えるほど、紹介を受けられる求人の幅も広がります。厚生労働省の一般職業紹介状況(2026年7月、常用・パートを含む原数値)では、仕事を探す人1人あたりの求人数を示す有効求人倍率が、一般事務従事者の0.29倍に対し、営業・販売事務従事者は0.87倍、会計事務従事者は0.56倍でした。
ただし、求人の多い職種がAIの影響を受けにくい職種とは限りません。経理事務は伝票の入力や仕訳など定型作業の割合が大きく、AIに置き換わりやすい作業を多く含む職種です。職種を選ぶときは、取引先や他部署との調整、例外的な処理の判断を任される仕事かどうかも、派遣会社の営業担当に確認しておきましょう。
派遣は、職種を変えて新しい経験を積みやすい働き方です。経験したい事務職の職種があれば、派遣会社の営業担当に希望を伝えて、未経験から応募できる求人がないか相談してみてください。
事務職のままで将来に不安がある方や、正社員を目指すかどうか迷っている方は、次の記事もあわせてご覧ください。
事務職とAIに関するよくある質問
事務職がAIでなくなる時期や、AIの影響を受けにくい職種など、事務職とAIについて派遣で働く方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 事務職はいつ頃AIでなくなりますか?
事務職という職種がなくなる時期を示した信頼できる予測はありません。よく引用される野村総合研究所の試算は、2015年の発表時点で、日本の労働人口の約49%が就いている職業について、10~20年後にAIやロボットで技術的に代替できる可能性を示したもので、事務職がなくなる時期を予測した数字ではありません。事務職は職種ごとなくなるのではなく、定型作業から少しずつAIに置き換わっていくと考えられます。
Q. 医療事務もAIでなくなりますか?
医療事務でも、レセプト(診療報酬明細書)の作成や予約の管理など、決まった手順の作業はAIやシステムに置き換わりやすくなります。一方で、受付での患者対応や、保険・制度についての説明は人が担う仕事として残ります。医療事務で働き続けたい方は、患者対応や院内の調整の経験を積んでおくと安心です。
Q. AIの影響を受けにくい事務職の職種はありますか?
どの事務職の職種にも定型作業は含まれているため、職種の名前だけでAIの影響の大きさは決まりません。そのうえで、社内外との調整や状況に応じた判断が多い仕事ほど、AIの影響を受けにくい傾向があります。営業事務の納期調整、貿易事務の海外取引先とのやりとり、総務や人事の社員対応などが当てはまります。職種を選ぶときは、職種の名前より、担当する作業の中身を確かめることが大切です。
Q. パソコンが苦手でも事務職の派遣で働き続けられますか?
パソコンが苦手な方でも、基本操作を身につければ、事務職の派遣で働き続ける道はあります。事務職の派遣ではWordとExcelの基本操作を求められることが一般的で、登録者向けに無料のパソコン講座を用意している派遣会社なら、基本操作から学び直すことも可能です。生成AIは日常の言葉で指示を出して使えるため、ExcelやWordの基本操作ができる方なら、生成AIの使い方も少しずつ覚えていけます。
Q. AIの影響が心配なら事務職をやめたほうがいいですか?
事務職をやめる必要はありません。事務職の定型作業はAIに置き換わっていきますが、調整や確認、判断を伴う仕事は事務職に残ります。事務職を続けながら生成AIを使うスキルを身につけ、担当する業務の幅を広げていくのが、これまでの経験を活かせる道です。職種を変えたい場合も、派遣会社の営業担当に相談すれば、今の経験を活かせる仕事を一緒に探してもらえます。
事務職とAIの変化に派遣で備えるためのまとめ
事務職は、AIで職種ごとなくなるのではなく、入力や転記などの定型作業からAIに置き換わっていく段階にあります。AIの影響を受けるかどうかは、派遣か正社員かではなく、担当している作業の中身で決まります。事務職の将来性を左右するのは、人と関わる仕事や判断を伴う仕事をどれだけ担えるかです。
事務職の派遣社員の強みは、派遣会社の生成AI研修や、営業担当への相談といった、変化に備えるための仕組みを使えることです。日本人材派遣協会が2026年に派遣会社に行った調査でも、派遣先から生成AIのスキルを求められる場面は今後3年で大きく増えると、多くの派遣会社が予測しています。求められるようになる前に学び始めた人ほど、次の派遣先を選ぶときの選択肢が広がります。
AIを怖がる必要はありません。AIを使う側に回り、人にしかできない仕事の割合を増やしていけば、事務職で長く働き続ける道は開けます。
生成AIの研修がある派遣会社に登録しておく
生成AIの研修を用意している派遣会社はまだ一部なので、研修がある派遣会社に登録しておくと、学ぶ機会を自分で選べます。派遣会社への登録は無料で、今の仕事を続けながら研修の案内や次の仕事の紹介を受けられます。事務職のスキルの更新を、登録から始めてみましょう。

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