派遣から正社員になるには?正社員登用の4つの方法と今の派遣先で動く手順

派遣先の職場で正社員になることを考える派遣社員の女性(派遣ガールズイラスト)

「今の職場、けっこう好き。このまま正社員になれたらいいのに…」

派遣で働いていると、契約更新の面談のたびに「この先も派遣のままでいいのかな」と考える瞬間があります。仕事の流れにも職場の人にも慣れてきたからこそ、今の派遣先で正社員になれないかと調べ始めた方も多いでしょう。

この記事では、派遣から正社員になる4つの方法と、今の派遣先で正社員を目指すときの手順を解説します。あわせて、派遣から正社員になれる確率の実際と難しいと言われる理由、正社員になった後に給料や有給休暇がどう変わるのかも取り上げます。

みなみ
今の派遣先、もう2年目なんです。仕事も好きだし、できればこのまま社員になりたくて…。でも、派遣から正社員なんて本当になれるんでしょうか。
れいか
なれる人はいるよ。前の職場でも、派遣から社員になった先輩がいたもん。ただ、声がかかる人とかからない人の差は、仕事ぶりだけじゃなかったな。その部署に正社員の枠が空いたかどうかも大きかった。
酒井先生
派遣から正社員になる方法は4つあります。今の派遣先で正社員を目指すなら、まず派遣会社の担当者に希望を伝えるところから始めましょう。今の派遣先に登用の道がなくても、紹介予定派遣や転職に切り替えれば正社員は目指せます。

派遣から正社員になる4つの方法

派遣から正社員になる方法は、派遣先の正社員登用・紹介予定派遣・他社への転職の3つです。もう1つ、派遣先の正社員とは別の形で継続的に働けるようにする方法として、派遣会社と期間の定めのない契約を結ぶ無期雇用派遣という選択肢もあります。4つは、どこの会社に雇われるのか、いつから動き出せるのかがそれぞれ違うので、まずは表で見比べてみましょう。

方法 雇い主 動き出せる時期 向いている人
派遣先の正社員登用 今の派遣先 今すぐ 今の職場と仕事を続けたい人
紹介予定派遣 紹介予定派遣の派遣先 次の仕事を選ぶとき 働いてみてから入社を決めたい人
他社への転職 応募した会社 今すぐ(働きながら) 今の派遣先に登用の道がない人
無期雇用派遣 派遣会社 今すぐ(派遣会社に相談) 派遣の働き方のまま雇用を安定させたい人

派遣先の正社員登用

派遣先の正社員登用とは、今働いている派遣先の会社が、派遣社員のあなたを自社の正社員として直接雇い入れることです。

派遣で働いているあいだ、あなたを雇っているのは派遣会社です。派遣先に登用されると雇い主が派遣会社から派遣先に変わり、派遣会社との労働契約は終わります。仕事の中身も職場の人も分かったうえで社員になれるため、入社してから「思っていた職場と違った」というずれが起きにくい方法です。

一方、正社員登用の制度を設けるかどうか、正社員の採用枠をいつ何人分用意するかは、派遣先の会社が決めています。派遣先から「直接雇用」の話が出ても、契約社員やパートとしての採用のこともあります。直接雇用の話が出た時点で、派遣先との窓口になっている派遣会社の営業担当を通じて、雇用形態を必ず確かめましょう。

紹介予定派遣

紹介予定派遣とは、派遣期間が終わった後に派遣先の社員になることを前提にして働き始める派遣です。

派遣として働く期間は最長6か月で、そのあいだにあなたと派遣先がお互いを見極め、派遣期間が終わる時点で双方が合意すれば、あなたは派遣先に直接雇用されます。通常の派遣では、派遣先が働く人を選ぶための面接をしないことになっていますが、紹介予定派遣では、働き始める前に派遣先が面接などであなたを選考することが認められています。なお、派遣期間が終わる時点であなたか派遣先のどちらかが合意しなければ、直接雇用には進みません。

紹介予定派遣は、今の派遣の契約が終わるタイミングで、次の仕事として選べる方法です。求人を探すときは、直接雇用された後の雇用形態が正社員かどうかを、派遣会社の担当者に確かめてから応募するようにしてください。

紹介予定派遣とは?デメリットや実態について徹底解説します

2022年5月23日

他社への転職

他社への転職は、今の派遣先とは別の会社の正社員求人に応募して、応募先の会社に雇われる方法です。派遣で働きながら転職活動を進められるので、収入を途切れさせずに動けます。

派遣で担当してきた事務の仕事は、職務経歴としてそのまま書けます。今の派遣先に登用の制度がない、正社員の採用枠が当面出そうにない、といった派遣先の事情に左右されずに進められる点が、他社への転職の強みです。一方で、応募先では書類選考や面接を一から受けることになり、今の派遣先での評価はそのままでは引き継がれません。

無期雇用派遣

無期雇用派遣とは、派遣会社と期間の定めのない労働契約を結び、派遣会社の社員として派遣先で働く働き方です。

無期雇用派遣では、派遣会社の正社員として雇われる形をとる会社もあります。ただし雇い主はあくまで派遣会社で、働く場所はこれまでどおり派遣先です。無期雇用派遣になっても、派遣先の正社員になるわけではありません。

派遣先の正社員ではなくても、無期雇用派遣には利点があります。派遣先での仕事が終わった後も、派遣会社との雇用は続きます。同じ部署で働けるのは3年までという派遣の期間制限も、無期雇用派遣には適用されません。労働者派遣法第40条の3が、同じ部署で働ける期間の制限の対象から、無期雇用の派遣社員を除いているからです。今の派遣会社が無期雇用派遣の募集をしていれば、切り替えを相談することもできます。派遣会社と期間の定めのない契約を結んだだけで、給与や賞与が正社員と同じ待遇になるとは限りません。給与の決め方や待遇は派遣会社ごとに違うため、募集の内容を見比べてから応募しましょう。

派遣社員が正社員になるための方法(派遣ガールズイラスト)

無期雇用派遣と紹介予定派遣~正社員を目指すならどっち?

2017年10月3日

参考:労働者派遣法 第40条の3(e-Gov法令検索)

紹介予定派遣と無期雇用派遣は、どちらも派遣会社に求人を紹介してもらうところから始まります。紹介予定派遣の求人の数は派遣会社によって差があるため、今の派遣会社だけでなく複数の派遣会社に登録しておくと、選べる求人が広がります。


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今の派遣先で正社員を目指す手順

派遣から正社員を目指すとき、最初に取りかかれるのが今の派遣先での登用です。派遣先の上司に切り出す前に、今の派遣先を受け持っている派遣会社の営業担当を通して動くのが基本になります。あなたを雇っているのは派遣会社で、派遣先との契約の調整も派遣会社が窓口になるからです。手順は次の4つです。

  1. 派遣会社の担当者に希望を伝える
  2. 派遣先の正社員登用制度を確かめる
  3. 派遣先の正社員募集に応募する
  4. 派遣先の登用試験を受ける

派遣会社の担当者に希望を伝える

今の派遣先で正社員を目指すなら、最初に派遣会社の営業担当へ「今の派遣先で正社員になりたい」と伝えましょう。営業担当は派遣先の人事や現場の責任者と日ごろからやり取りしていて、正社員登用の制度や採用の予定を確かめられる立場にいます。

希望を伝える時期の目安は、契約更新の面談です。更新の前には、営業担当が次の契約を続けるかどうかを確かめる連絡や面談があります。更新の意向を答えるときに、正社員を目指していること、いつごろまでに実現したいか、勤務時間や勤務地の希望を合わせて伝えておくと、営業担当は派遣先に話を持ち出しやすくなります。次の更新まで間があるときは、営業担当が職場を訪ねてきたときや電話で話すときに伝えてもかまいません。

派遣会社との労働契約の期間が残っているうちに派遣先の社員になる場合は、派遣会社を退職する時期を営業担当と相談する必要があります。登用の時期を派遣の契約の満了日に合わせられると切り替えの手続きがスムーズに進むので、早めに営業担当へ相談しておきましょう。

派遣先への就職の自由

「正社員になりたいと派遣会社に言ったら、嫌がられるのでは」と心配する方もいます。派遣会社は、派遣会社との雇用関係が終わった後にあなたが派遣先へ雇われることを禁じる契約を、正当な理由なく結べません。労働者派遣法第33条が、派遣社員との間でも派遣先との間でも、派遣先への就職を禁じる契約を結ぶことを禁止しているからです。

派遣が終わった後、一定の期間は派遣先に就職できないと定めた法律もありません。派遣先の正社員を目指していることを、派遣会社に遠慮して隠す必要はありません。なお、第33条が対象にしているのは派遣会社との雇用関係が終わった後のことで、派遣会社との労働契約が残っているあいだに派遣先へ移る場合は、労働契約をいつ終えるかを派遣会社と相談することになります。

参考:労働者派遣法 第33条(e-Gov法令検索)

派遣先の正社員登用制度を確かめる

派遣先に正社員登用の制度があるかどうかは、あなたから派遣会社の営業担当に頼んで、派遣先に確かめてもらいましょう。正社員登用の制度は法律で設置が義務づけられたものではなく、会社が自社で設けるかどうかを決める社内制度です。制度がある会社でも、対象が自社で直接雇っている契約社員に限られ、派遣社員は対象外という場合があります。

営業担当に確かめてもらう項目は次の4つです。

  • 派遣社員が登用の対象に入っているか
  • 応募の条件(勤続期間、上司の推薦など)
  • 派遣社員から登用された実績があるか
  • 登用された後の雇用形態(正社員か契約社員か)

とくに、派遣社員から登用された実績は大切です。制度が社内規程にあっても、派遣社員から登用された人がまだいない会社もあります。過去に登用された人がいれば、登用された人がどのくらいの期間働いてから登用されたのかも、営業担当に聞いておきましょう。あなたが登用を目指す時期の見通しが立てやすくなります。

派遣先の正社員募集に応募する

正社員登用の制度がない派遣先でも、派遣先が正社員の中途採用を募集すれば、派遣社員のあなたも応募できます。派遣で働いた期間が1年に満たなくても、募集を見つけて応募すること自体は可能です。

同じ事業所で1年以上続けて働いているなら、派遣先がその事業所で正社員(条文では「通常の労働者」)を募集するとき、あなたは募集内容を知らせてもらえます。労働者派遣法第40条の5第1項が、仕事の内容・賃金・労働時間などを掲示などの方法で知らせるよう、派遣先に義務づけているからです。社内の掲示板や回覧に正社員の募集が出ていないか目を通し、応募したい募集を見つけたら、応募する前に派遣会社の営業担当へ伝えましょう。派遣先へ移る時期の調整が必要になるからです。

参考:労働者派遣法 第40条の5(e-Gov法令検索)

派遣先の登用試験を受ける

派遣先の正社員登用制度を使う場合も、派遣先の中途採用に応募する場合も、派遣先はあなたを自社の社員として迎えるための選考を行います。面接だけで決まる会社もあれば、書類選考、適性検査、小論文を課す会社もあります。

同じ職場で働いていても、選考は社外からの応募者と同じ基準で行われるのが一般的です。履歴書と職務経歴書を用意し、派遣で担当してきた業務を、初めて会う人事部の担当者にも伝わる言葉で説明できるようにしておきましょう。選考で見られる点や、落ちたときの派遣契約の扱いは、次の記事で詳しく解説しています。

派遣から直接雇用の面接で落ちる理由

派遣から直接雇用の面接で落ちる理由|選考の中身と落ちた後の働き方

2026年9月25日
みなみ
選考があるなら、派遣先の課長に先に「正社員になりたいです」って言っておいたほうが有利じゃないですか?
酒井先生
課長に気持ちを話すこと自体は悪いことではありません。ただ、正社員の採用は課長ひとりでは決められず、派遣先の人事部も関わります。先に派遣会社の営業担当に伝えておけば、人事部への申し入れと派遣の契約の調整が同時に進みます。課長には、営業担当に伝えた後で気持ちを話せば十分です。

正社員に声がかかりやすい派遣先での働き方

派遣から正社員に登用されるかどうかは、派遣先に正社員の採用枠があるかと、現場があなたをどう評価しているかで決まります。採用枠はあなたの力では動かせません。一方、現場の評価と、希望を伝えるタイミングは、あなた自身で変えていけます。

仕事の幅を広げる

派遣先で正社員を目指すなら、今の業務の中で仕事の幅を広げていきましょう。派遣の仕事は、派遣会社と派遣先が契約で決めた業務の範囲に限られています。一方、正社員は部署の状況に合わせて担当が広がるのが一般的です。そのため、派遣先が派遣社員を正社員として迎えるかどうかを考えるときに見るのは、担当が広がっても任せられる人かどうかという点です。

勤怠が安定していることや報告を欠かさないことが、仕事の幅を広げる土台になります。そのうえで、契約で決めた範囲の中でも、作業の手順書を整える、ミスが起きにくい確認の流れを提案する、新しく入った人に仕事を引き継ぐ、といった形で仕事の幅は広げられます。こうした動きは、社員としての役割を担えるという評価を派遣先から得る、いちばん身近なきっかけです。

なお、契約にない業務を頼まれたときに、あなたの判断だけで引き受けるのは避けましょう。担当する業務を広げたいときは営業担当に相談し、派遣会社と派遣先の契約内容を見直してもらう形をとるのが確実です。まずは手順書づくりや引き継ぎなど、今の業務の中でできることから始めてみましょう。

正社員の募集が出やすい時期

派遣先で正社員の募集が出やすいのは、社員の退職で欠員が出たとき、部署の業務が増えて人を増やすとき、新しい部署や拠点を立ち上げるときです。派遣社員で人手を補ってきた部署が、社員の採用に切り替えるのもこうした場面です。

多くの会社は年度ごとに採用する人数を決めていて、採用計画を立てる時期は会社ごとに違います。計画が固まる前にあなたの希望が営業担当を通じて派遣先に伝わっていれば、派遣先があなたを採用の候補に挙げる機会が生まれます。職場で社員の退職や部署の増員の話を耳にしたときも、営業担当へ希望をあらためて伝えるよい機会です。契約更新の面談のたびに、正社員を目指す気持ちが変わっていないことを営業担当に伝えておきましょう。

派遣から正社員になれる確率

派遣から正社員になれる確率のうち、公的な統計で数字が出ているのは、紹介予定派遣で直接雇用された人の割合と、派遣会社が派遣先に直接雇用を依頼したケースで派遣先に雇われた人の割合の2つです。派遣社員全体について、今の派遣先で正社員に登用される確率を示した公的な統計はありません。

紹介予定派遣なら54%は直接雇用に

厚生労働省の「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」によると、令和6年度に紹介予定派遣で派遣された人は25,535人で、そのうち派遣先に直接雇用された(派遣先に雇われた)人は13,881人でした。紹介予定派遣で派遣された人のうち、約54%が直接雇用に結びついた計算になります。

紹介予定派遣では、派遣期間を終えた人のうち、派遣会社が派遣先に社員候補として正式に紹介する手続き(職業紹介)まで進んだ人が18,219人いました。職業紹介まで進んだ人の中で見ると、直接雇用に結びついたのは約76%です。約54%は派遣された人全員を、約76%は職業紹介まで進んだ人だけを分母にした割合です。職業紹介に進む前に、派遣社員か派遣先のどちらかが直接雇用を見送るケースもあるため、分母によって割合が変わります。

なお、統計の「直接雇用」は正社員と契約社員を分けて集計していないため、正社員になった人だけの割合は分かりません。

出典元:令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)(厚生労働省)

今の派遣先で登用される確率は?

派遣社員全体について、今の派遣先で正社員に登用される確率を示した公的な統計はありません。登用されるかどうかは、派遣先に正社員登用の制度があるか、派遣先の正社員の採用枠があなたの希望する時期に空いているかに左右され、派遣先ごとに条件がまったく違うからです。

ただし、手がかりになる数字が1つあります。同じ部署で1年以上働く見込みの派遣社員について、派遣会社が派遣先に「直接雇ってほしい」と依頼したケースの統計が公表されています。厚生労働省の「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」によると、令和6年度に派遣会社が依頼した67,887人のうち、派遣先に雇われたのは27,803人(41.0%)でした。

ただし、対象となる派遣社員のうち、派遣会社による依頼まで進んだのは6.0%とかなり限定的で、実際に雇われたケースでもそれが正社員か契約社員かは明示されていません。

また、派遣会社のサイトなどで「◯%が正社員になった」という数字を見かけたときは、何を分母にした数字なのかを見ておきましょう。派遣会社が自社で扱った紹介予定派遣の実績であることも多く、今の派遣先での登用の見通しとは別の数字です。

確率の数字を探すより、今の派遣先の状況を確かめるほうが、あなたの見通しははっきりします。今の派遣先で正社員を目指せるかを知るために、登用の制度があるか、派遣社員から登用された人がいるかを、派遣会社の営業担当に確かめてもらいましょう。

出典元:令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)(厚生労働省)

派遣から正社員になるのは難しいと言われる理由

派遣から正社員になるのは難しいと言われる理由は、あなた自身の努力よりも、派遣先の事情や事務職の採用市場によるものが多くあります。理由が分かれば、今の派遣先で粘るのか、別の方法に切り替えるのかを判断しやすくなります。

派遣先に正社員登用制度がない

正社員登用の制度は、各社が任意で設ける社内制度です。登用の制度を設けていない派遣先では、制度を使って登用される道はありません。

登用の制度がない派遣先でも、派遣先から個別に直接雇用を打診される場合や、派遣先が正社員の中途採用を募集したときに応募する方法は残ります。ただし募集がいつ出るかは派遣先しだいで、何年も募集が出ない職場もあります。営業担当に募集の見込みを聞いてみて、見込みが薄ければ紹介予定派遣や転職への切り替えも考えましょう。

正社員の採用枠が少ない

事務職は、働きたい人の数に比べて求人が少ない職種です。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、令和8年8月の一般事務従事者の有効求人倍率(仕事を探す人1人あたりの求人数・パートタイムを除く常用)は0.29倍で、職業計の1.17倍を大きく下回っています。ハローワークに出された求人と求職者だけの数字で、契約社員などの求人も含み正社員に限った値ではありませんが、事務職のフルタイムの枠そのものが限られている状況は読み取れます。

出典元:一般職業紹介状況 第21表 職業別労働市場関係指標(令和8年8月分)(厚生労働省・e-Stat)

派遣先は派遣社員で人員を調整している

派遣先が事務の仕事に派遣社員を受け入れる理由の一つは、繁忙期や欠員に合わせて人数を調整しやすいことです。正社員を1人採用すると、派遣先は長期にわたって人件費を負担することになるため、正社員の枠は慎重に決められます。

そのため、現場の評価が高くても、派遣先が正社員を増やす予定がなければ正社員登用の話は出ません。声がかからないことが、そのままあなたへの評価の低さを意味するわけではない、ということは覚えておいてください。

30代・40代は実態として経験が求められる

30代・40代で正社員の求人に応募すると、実態としては、即戦力になる経験を求めてくる会社が多くあります。一方で、正社員の募集で年齢に上限を設けることは、原則として禁止されています。労働施策総合推進法第9条が、募集と採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう、労働者を募集・採用する会社に義務づけているからです。

年齢制限が認められる例外もいくつかあり、その1つが、未経験者を期間の定めのない契約で採用して長く育てる目的で、若い人に限って募集する場合です(労働施策総合推進法施行規則第1条の3)。

30代・40代で正社員を目指すときの分かれ目は、派遣で積んできた経験を、担当した業務・扱った件数・使ったソフトといった具体的な形で示せるかどうかです。今の派遣先での仕事の中身を、今のうちにメモにまとめておきましょう。

参考:労働施策総合推進法 第9条(e-Gov法令検索)

みなみ
派遣先に登用の制度がなかったり、年齢で経験を求められたりすると、もう正社員はあきらめるしかないんでしょうか…。
れいか
私の知り合いは、派遣先に制度がないって分かって、次の契約で紹介予定派遣に切り替えたよ。半年働いて、そのまま正社員になってた。
酒井先生
登用の道がないのは派遣先の事情で、あなたの評価とは関係ありません。今の派遣先にこだわらなければ、紹介予定派遣や転職で正社員を目指せます。年齢が気になるなら、派遣で担当してきた業務を具体的に書き出すところから始めましょう。

派遣から正社員を目指す転職活動の進め方

派遣から正社員を目指す転職活動は、今の派遣先に登用の道がないときに選べる方法です。派遣で担当してきた仕事は、正社員の選考でも職務経歴として扱われます。派遣で働きながら進めるための3つのポイントを見ていきましょう。

派遣の経験を職務経歴書に書く

職務経歴書には、派遣で働いた期間も職歴として書きましょう。雇い主は派遣会社なので、「株式会社◯◯(派遣会社名)に登録し、株式会社△△(派遣先名)に派遣」のように、派遣会社と派遣先の両方を書くのが一般的です。期間は、派遣先ごとに就業を始めた年月から終えた年月までを書きます。

業務の書き方は、「一般事務」で終わらせず、具体的な中身まで書きましょう。「営業部で受発注の入力を担当。月300件の伝票をExcelと販売管理システムで処理」のように、部署・件数・使ったソフトを並べると、採用担当者はあなたに任せられる仕事を思い描けます。複数の派遣先で働いた方は、派遣先ごとに分けて書くと読みやすくなります。

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2022年5月24日

派遣を続けながら転職活動する

派遣から正社員を目指す転職活動は、派遣で働きながら進めるのが基本です。収入が途切れないので、焦って条件の合わない会社に決めてしまうことを避けられます。

面接の日程は、派遣の仕事が休みの日や有給休暇を使って調整します。内定が出たら、入社日を派遣の契約の満了日の後に設定してもらえるよう、応募先と相談しましょう。契約期間の途中で転職先が決まった場合は、派遣会社の営業担当にできるだけ早く伝えて、退職の時期を相談してください。

派遣契約途中で転職するなら絶対知るべきこと|途中解約のリスクとは

2017年11月9日

転職エージェントを併用する

派遣で働きながら正社員を目指すときは、自分で求人を探すのと並行して転職エージェントを使うと、活動を続けやすくなります。転職エージェントは、希望に合う正社員の求人を紹介し、職務経歴書の添削や面接の日程調整まで手伝ってくれる転職支援サービスです。派遣で働きながらだと求人を探す時間を取りにくいものですが、求人探しと日程調整を任せられる分、仕事と両立しやすくなります。

転職エージェントで正社員の求人に応募しながら、派遣会社で紹介予定派遣の求人を探すこともできます。転職エージェントと紹介予定派遣を並行して使うことで、正社員になる道を1つに絞らずに済むのが併用の利点です。派遣会社の担当者に紹介予定派遣の求人があるかを相談しながら、転職エージェントにも登録しておきましょう。

派遣から正社員になると働き方はどう変わる?

派遣から正社員になると、雇用は安定する一方で、時給の感覚で比べると給料が下がる場合もあります。正社員になってから後悔しないために、変わる点を先に知っておきましょう。

雇用期間の定めがなくなり雇用が安定する

正社員として雇われると、多くの場合、雇用期間の定めがなくなります。3か月や6か月ごとの契約更新がなくなり、派遣の契約が更新されるかどうかを気にしながら働く必要がなくなるのは、派遣から正社員になるいちばんの変化です。

ただし、直接雇用でも契約社員として雇われた場合は、雇用期間の定めが残ります。契約社員としての直接雇用を提案されたときは、契約期間と、更新に上限があるかどうかまで聞いておきましょう。

時給で比べると給料が下がることもある

派遣から正社員になると、毎月の給料が派遣のときより下がることがあります。派遣は時給で働く形が一般的で、事務の派遣の時給は、同じ仕事をする正社員の月給を時給に直した額より高く設定されていることがあるからです。

給料が下がりやすいケース

給料が下がりやすいのは、時給の高い派遣で働いていた人が、月給の低めな会社の正社員になるケースです。正社員は年収の一部を賞与で受け取る会社が多く、賞与を除いた毎月の給料だけを見ると、派遣のときより少なく見えます。入社1年目は賞与の対象期間(評価の対象になる勤務期間)に満たないために、最初の賞与が少なくなる会社もあります。

月給と賞与を合わせた年収で比べる

派遣と正社員の給料は、毎月の額ではなく、賞与を含めた1年間の合計で比べましょう。たとえば次のような計算になります。

働き方 計算の前提(例) 年収
派遣 時給1,600円×1日7.5時間×月20日×12か月(賞与なし) 288万円
正社員 月給22万円×12か月+賞与(年2回で月給2か月分) 308万円

計算例では、毎月の給料は正社員の22万円が派遣の24万円を下回りますが、年収では正社員が上回ります。派遣では、祝日や長期休暇の多い月は働く日数が減るぶん収入も減ります。正社員の月給は、働く日数が少ない月でも原則として変わりません。退職金や住宅手当の有無も、比べる項目に入れておきましょう。

なお、派遣先から提示された直接雇用の条件が、時給制の契約社員だったというケースもあります。直接雇用を提案されたときに確かめておきたい点は、次の記事にまとめています。

派遣先から直接雇用の提案を受け、迷うれいか(派遣ガールズイラスト)

【実態】派遣先から直接雇用されるリスク7選!契約社員はゲームオーバー?

2022年5月27日

有給休暇の勤続年数は原則引き継がれない

派遣会社で働いていた期間は、派遣先に雇われた後の年次有給休暇の勤続年数には、原則として数えられません。有給休暇の日数は同じ会社に続けて勤めた年数が長いほど増えます。勤めた年数は会社ごとに数えるもので、派遣のあいだの雇い主である派遣会社と、正社員として雇われる派遣先は、別の会社だからです。

労働基準法第39条は、会社に雇い入れられた日から6か月続けて勤務し、出勤すべき日の8割以上出勤した人に、10日の有給休暇を与えるよう会社に義務づけています。派遣先の正社員になると、派遣先に雇い入れられた日から数え直しになるのが原則で、派遣での勤続が長くても、入社から6か月後の10日からの再スタートになります。会社によっては入社した日から有給休暇を与える、派遣で働いた期間を考慮するなどの独自のルールを設けているので、内定が出た段階で、派遣先の人事担当者に聞いておきましょう。

また、勤続年数とは別に、使い残した有給休暇にも注意が必要です。派遣会社で使い残した有給休暇は、派遣会社を退職すると使えなくなります。派遣先の正社員になる日が決まったら、派遣の契約が終わるまでに残りの有給休暇をどう使うかを派遣会社の営業担当と相談しておきましょう。

参考:労働基準法 第39条(e-Gov法令検索)

異動や残業を求められやすくなる

正社員になると、部署の異動や残業を求められる場面が増えます。派遣の仕事は契約で決めた業務と勤務時間の範囲で働くのが原則でしたが、正社員は会社の人事の方針に沿って配置が決まるからです。

会社によっては、転勤のある正社員と、勤務地が限られた正社員を分けて採用しています。正社員として雇われるとき、あなたは労働条件通知書(雇用条件を書面で示す書類)で、就業場所と業務がこの先どこまで変わりうるかを確かめられます。労働基準法第15条第1項と労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3が、2024年4月から、就業場所と業務の変更の範囲まで明示するよう会社に義務づけているからです。異動や転勤の範囲と残業の目安は、内定を承諾する前に会社に質問しておきましょう。

参考:労働基準法施行規則 第5条(e-Gov法令検索)

れいか
友達は派遣から正社員になって、残業は少し増えたし、毎月の手取りも少し減ったって言ってた。でも夏と冬に賞与が出て、年収で見たらほとんど変わらなかったみたい。何より、更新のたびにドキドキしなくてよくなったのが大きいって。

派遣から正社員に関するよくある質問

派遣から正社員を目指すときには、かかる期間や3年ルールとの関係など、方法とは別のところでも疑問が出てきます。派遣で働く方から寄せられやすい6つの質問に答えます。

  1. 正社員になるまでの期間は?
  2. 3年働けば正社員になれる?
  3. 派遣先から誘われたら派遣会社に伝える?
  4. ずるいと思われる?
  5. 派遣先は助成金をもらえる?
  6. 一生派遣のままでも大丈夫?

Q. 派遣から正社員になるまでの期間はどのくらい?

派遣から正社員になるまでの期間は、選ぶ方法によって変わります。紹介予定派遣であれば、派遣として働く期間は最長6か月で、派遣期間を終えた時点で直接雇用されるかどうかが決まります。

今の派遣先で正社員に登用されるまでの期間は、法律などで一律に決まっていません。登用の条件として勤続期間を定めている会社もあるため、派遣会社の営業担当に、派遣先の登用の条件を確かめてもらいましょう。なお、同じ事業所で1年以上続けて働いている派遣社員には、派遣先がその事業所で正社員を募集するとき、募集内容を知らせなければなりません。募集の知らせが届いたら、応募するかどうかを営業担当に相談しましょう。

Q. 派遣で3年働けば正社員になれる?

派遣で3年働いても、それだけで正社員になれるわけではありません。いわゆる3年ルールは、労働者派遣法が、派遣社員が同じ部署で働ける期間の上限を3年と定めたもので、正社員になれる決まりではないからです。

派遣会社と期間を定めた契約で働いている派遣社員が同じ部署で3年働く見込みになり、本人が働き続けることを望んでいる場合、派遣会社は、派遣先へ直接雇用を依頼する、別の派遣先を紹介する、派遣会社で無期雇用にするなどの雇用を安定させる措置を講じなければなりません。派遣先に依頼しても雇用に至らなかったときは、派遣会社は別の措置を続けて講じる必要があります。あなたが派遣先での直接雇用を望むなら、派遣会社が派遣先へ依頼してくれるよう、早めに営業担当へ希望を伝えておきましょう。

なお、同じ派遣会社との有期契約が通算5年を超えると、あなたは派遣会社に、期間の定めのない契約への切り替え(無期転換)を申し込めます。労働契約法第18条が定めるルールで、申し込めば派遣会社は承諾したものとみなされます。ただし、無期転換で変わるのは契約期間だけです。雇い主は派遣会社のままで、時給などの労働条件も原則として変わらないため、派遣先の正社員になるわけではありません。

派遣の3年ルールで辞めたくないと悩む女性と、雇用安定措置を説明する先生(派遣ガールズイラスト)

派遣の3年ルールで辞めたくない|4つの選択肢と最初にやること

2017年4月6日

Q. 派遣先から直接誘われたら派遣会社に伝えるべき?

派遣先の上司から個人的に「うちの社員にならない?」と誘われたときも、派遣会社には必ず伝えましょう。派遣会社と派遣先の間には派遣の契約があり、あなたと派遣会社の労働契約や、派遣会社と派遣先の派遣契約をいつ終えるかは、実務上、派遣会社を通して調整することになるからです。伝えないまま話を進めると、契約の終わらせ方の調整が後手に回り、あなたが両社の間で板挟みになることがあります。

誘われた後の選考の流れについて詳しくは「派遣から直接雇用の面接で落ちる理由|選考の中身と落ちた後の働き方」をご覧ください。

Q. 派遣から正社員になるとずるいと思われる?

派遣から正社員になることは、ずるいことではありません。紹介予定派遣や正社員登用といった、会社が用意した正規の方法で進むものだからです。派遣先も選考を経てあなたを採用しているため、後ろめたく思う必要はありません。

それでも周囲の目が気になるときは、選考の途中で噂にならないよう、決まるまでは話を広めないようにしましょう。正式に決まってから、派遣先の上司と相談して周囲に伝えれば十分です。同じ職場の派遣社員から「どうやって正社員になったの?」と聞かれたら、正社員登用か中途採用への応募かなど、あなたが選んだ方法を隠さず答えると、関係もこじれにくくなります。

Q. 派遣社員を正社員にすると派遣先は助成金をもらえる?

派遣先の会社は、条件を満たせば国のキャリアアップ助成金(正社員化コース)を受け取れます。厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」によると、派遣先が派遣社員を正社員として直接雇用する場合、派遣社員は助成額が手厚くなる「重点支援対象者」にあたります。派遣先が受け取れる助成額は、派遣会社と期間を定めた契約で働いていた派遣社員を正社員にした場合、1人あたり中小企業で80万円、大企業で60万円です。金額は、正社員にしてから6か月ごとに2回に分けて支給される額の合計で、2026年4月8日現在のものです。

派遣先が助成金を受け取るには、派遣社員を正社員として直接雇用する制度を就業規則などに定めていること、同じ部署で6か月以上続けて同じ派遣社員を受け入れていたこと、正社員にした後6か月間の賃金を、正社員にする前の6か月間より3%以上増やしていることなどの条件があります。

助成金を受け取るのは派遣先の会社で、あなたに支払われるお金ではありません。助成金があるからといって派遣先が必ず登用するわけでもありませんが、派遣社員を正社員に迎える会社を、国が助成金で支援する仕組みが用意されています。

出典元:キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)(厚生労働省)

Q. 一生派遣のままでも大丈夫?

派遣のまま働き続ける選択も、もちろんあります。派遣のままでよいかどうかは、あなたが何を大切にしたいかしだいです。働く時間や職場を選びやすい派遣の働き方が合っている人もいれば、更新のない雇用で将来の見通しを立てたい人もいます。

派遣で働き続けながら、無期雇用派遣に切り替える、紹介予定派遣で正社員を目指すといった選択肢を、あなたの状況に合わせて選ぶこともできます。独身のまま派遣を続けていく将来が気になるあなたは、次の記事も参考にしてください。

一生派遣でも独身なら生きていける?将来不安な方が正社員になる方法

2022年5月16日

派遣から正社員を目指す方法のまとめ

派遣から正社員を目指す道は、今の派遣先での登用だけではありません。紹介予定派遣や他社への転職でも正社員を目指せますし、派遣会社と期間の定めのない契約を結んで雇用を安定させる無期雇用派遣という選択肢もあります。

今の派遣先で正社員になれるかどうかは、派遣先に登用の制度と正社員の採用枠があるかに左右されます。あなたの頑張りとは別の事情で決まる部分があるからこそ、1つの道に絞りすぎず、営業担当に希望を伝えながら、次の契約で選べる方法も視野に入れておくと安心です。

正社員を目指す気持ちは、口にしなければ誰にも伝わりません。次に営業担当と話す機会に、「正社員を目指したい」と一言伝えるところから始めてみましょう。

酒井先生
派遣で積んできた経験は、どの方法を選んでも正社員への足がかりになります。今の派遣先で声がかからなくても、道は1つではありません。

紹介予定派遣の求人や無期雇用派遣の募集は、派遣会社によって扱う数が違います。正社員への道を広げるために、複数の派遣会社に登録しておきましょう。


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