「契約期間はまだ残っているのに、来週で終わりと言われた…。これって労基署に言えばいいの?」
派遣切りを告げられると、頭が真っ白になって、どこに何を言えばよいのか分からなくなります。「不当な派遣切りは労働基準監督署へ」とよく言われるものの、労働基準監督署が動けるのは労働基準法などの違反がある場合に限られるのが実情です。派遣切りの内容によっては、都道府県労働局や労働組合のほうが話が早いこともあります。
この記事では、不当な派遣切りを受けたときの相談先を内容ごとに整理し、契約途中の解除と契約満了時の雇止めの違い、相談の前に揃えておく書類を解説します。派遣切りという言葉の定義から知りたい方は、記事の途中で紹介する解説記事もあわせてご覧ください。


不当な派遣切りの内容別の相談先
不当な派遣切りを受けたときの相談先は1つではありません。お金の未払いなのか、派遣切りそのものの有効性なのか、派遣会社や派遣先の手続き違反なのかで、話を聞いて動いてくれる窓口が変わります。まずは次の表で、あなたの悩みに合う窓口を確認してください。
| 相談先 | 扱う内容 | できること |
|---|---|---|
| 派遣会社(営業担当・派遣元責任者) | 派遣切りの理由、次の仕事、賃金や休業手当 | 次の派遣先の紹介、手当の支払い |
| 労働基準監督署 | 解雇予告手当・休業手当・賃金の未払いなど労働基準法の違反 | 派遣会社への調査・是正の指導 |
| 総合労働相談コーナー | 解雇や雇止めに納得できないなど労働問題全般 | 情報提供、労働局長の助言・指導、あっせんの案内 |
| 労働局の需給調整事業部門 | 労働者派遣法に関わる派遣会社・派遣先の対応 | 派遣会社・派遣先への指導 |
| 労働組合・弁護士(法テラス) | 派遣会社との交渉、裁判や労働審判 | 団体交渉、代理人としての交渉・手続き |
派遣切りの最初の相談先は派遣会社
派遣社員を雇っているのは派遣先ではなく派遣会社です。派遣切りを告げられたら、まず派遣会社の営業担当に、終了の理由と、次の派遣先を紹介してもらえるかを確認しましょう。営業担当の対応に納得できないときは、派遣会社ごとに置かれている派遣元責任者に話を上げてもらえます。
派遣会社とのやり取りは、電話のあとにメールで内容を送っておくと記録に残ります。外部の窓口に相談するときも、派遣会社が何と答えたかを聞かれるので、日付と内容を控えておきましょう。
労働基準監督署が扱うのは労働基準法の違反
労働基準監督署は、派遣会社が労働基準法などを守っていないときに調査・指導をする機関です。派遣切りで労働基準監督署が動きやすいのは、次のようにお金の未払いがはっきりしているケースです。
- 契約途中で解雇されたのに、30日前の予告も解雇予告手当もない
- 派遣会社の都合で仕事がない期間に、休業手当が払われない
- 最後の月の給与や残業代が払われない
一方、「派遣切りそのものが不当だから撤回してほしい」という相談は、解雇や雇止めが有効かどうかという民事の問題になるため、労働基準監督署が派遣会社に撤回を命じることはできません。派遣切りの有効性を争いたいときは、次に紹介する総合労働相談コーナーを使いましょう。
派遣切りの有効性は都道府県労働局に相談
都道府県労働局には、派遣切りの相談で使える窓口が2つあります。
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、各都道府県労働局と全国の労働基準監督署の中などに置かれている無料の相談窓口です。予約は要りません。解雇や雇止めなどの相談を受け、必要に応じて労働局長による助言・指導や、紛争調整委員会による「あっせん」を案内してくれます。あっせんは、弁護士などの専門家が間に入って派遣会社との話し合いをまとめる手続きで、費用はかかりません。
なお、あっせんは話し合いの場なので、派遣会社が参加を断れば手続きは終わります。派遣会社と正面から争うなら、労働組合や弁護士に相談するのが次の選択肢です。収入が一定以下の方は、法テラスの無料法律相談を利用できます。
需給調整事業部門
都道府県労働局の需給調整事業部門(労働局によって部・課・室の名称が違います)は、派遣会社や派遣先が労働者派遣法を守っているかを指導する部署です。派遣先が契約途中で派遣契約を解除したのに派遣会社と次の仕事の確保を話し合わない、就業条件明示書を渡されていない、といった派遣ならではの問題はこちらに相談しましょう。
派遣切りは契約途中の解除と満了時の雇止めで扱いが違う
ひと口に派遣切りといっても、契約期間の途中で終わらされる場合と、契約満了のタイミングで更新されない場合があります。どちらにあたるかで、派遣会社に求められる手続きや、あなたが受け取れるお金が変わるため、相談の前に整理しておきましょう。派遣切り・雇止め・解雇の言葉の違いは、次の記事で詳しく解説しています。
契約途中の派遣切りは原則として認められない
派遣会社があなたとの有期の労働契約を期間の途中で解雇できるのは、やむを得ない事由がある場合に限られます。労働契約法第17条第1項が、期間の定めのある労働契約について定めている決まりです。派遣先が派遣契約を途中で解除したことだけでは、派遣会社とあなたの労働契約は終わりません。
派遣先から派遣契約を解除された場合、派遣会社はまず次の派遣先を探します。次の仕事が見つからないまま派遣会社の都合で休ませる期間は、派遣会社が平均賃金の6割以上の休業手当を払わなければなりません(労働基準法第26条)。それでも派遣会社があなたを解雇するなら、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払う必要があります(労働基準法第20条)。
派遣先にも責任があります。派遣先の都合で派遣契約を途中で解除するときは、派遣先は派遣会社と協力してあなたの新しい就業先を確保し、確保できなければ休業手当などにかかる費用を負担するなどの措置をとらなければなりません(労働者派遣法第29条の2)。
契約満了時の派遣切りは雇止め
契約満了のタイミングで更新されないことは雇止めと呼ばれ、契約途中の解雇とは別の扱いです。派遣会社は、あなたとの有期の労働契約を3回以上更新しているか、雇い入れから通算1年を超えて働いている場合、更新しないときは契約満了日の30日前までに予告しなければなりません。厚生労働大臣が定めた告示「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」第2条の定めで、契約の時点で「更新しない」と明示されていた場合は対象外です。予告の対象になる契約であれば、あなたは更新しない理由を書いた証明書を派遣会社に請求できます。雇止めになった後でも請求できます。
告示の予告の定めに違反しても罰則はなく、労働基準監督署の助言・指導の対象です。さらに、何度も更新されて期間の定めがないのと同じ状態になっていた場合や、更新されると期待するのが当然といえる事情があった場合は、労働契約法第19条により、合理的な理由のない雇止めは認められません。あなたが契約満了までに、または満了後すぐに更新を申し込んでいることが前提になるので、更新を望むなら派遣会社にはっきり伝えておきましょう。
なお、派遣先の同じ部署で働ける期間の上限(抵触日)による終了は、雇止めとは仕組みが違います。
参考:有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(厚生労働省)
派遣切りを相談する前に揃えておく書類と記録
派遣切りの相談では、相談員が契約期間や告げられた時期を確認して、どの窓口でどう扱うかを判断します。手ぶらで行っても相談はできますが、次の書類と記録があると話が早く進みます。
就業条件明示書と労働条件通知書
就業条件明示書は、派遣会社が就業前にあなたに渡す、派遣先・業務内容・契約期間などを書いた書類です。労働条件通知書と一緒になっていることもあります。契約期間の途中で終わらされたのか、満了で終わったのかは、就業条件明示書に書かれた期間で判断します。更新の有無や更新の基準も書かれているので、手元にあるか確認しましょう。


派遣切りを告げられた日時と理由の記録
派遣切りを告げられたら、いつ・誰から・どんな理由で・いつ付けで終わると言われたかを、告げられた当日のうちにメモしておきましょう。電話で告げられたなら、確認のメールを派遣会社に送り、返信を残しておくと確実です。
理由があいまいなときは、書面で理由をもらいましょう。解雇された場合は、あなたが請求すれば派遣会社は解雇の理由を書いた証明書を交付しなければなりません(労働基準法第22条)。雇止めの場合も、予告の対象になる契約であれば、更新しない理由の証明書を請求できます。給与明細やタイムカードの写しも、休業手当や未払い賃金を計算するときに役立ちます。
厳重注意の書面へのサイン
派遣先から勤務態度について指摘があったとき、派遣会社から「このように派遣先から言われております。繰り返すようであれば契約終了になります」といった内容の書面にサインを求められることがあります。
厳重注意の書面にサインしたからといって、そのあとの派遣切りが必ず有効になるわけではありません。解雇や雇止めが認められるかは、理由の重さや手続きの適切さなど全体の事情で判断されます。ただ、書面は後から「注意を受けていた」という証拠として使われるため、事実と違う内容が書かれているならサインする前に訂正を求め、写しをもらっておきましょう。
とくに注意したいのが、「契約を終了することに合意します」といった退職の合意書です。合意書にサインすると、派遣切りではなく話し合いで辞めたことになり、あとから争うのが難しくなります。納得できないときは、その場でサインせず持ち帰って考えましょう。

不当な派遣切りの相談先まとめ
不当な派遣切りを受けたら、まずは雇い主である派遣会社に理由と次の仕事を確認し、話が進まないときに外部の窓口を使いましょう。解雇予告手当や休業手当の未払いは労働基準監督署、派遣切りそのものに納得できないなら総合労働相談コーナー、派遣会社や派遣先の手続きに問題があるなら労働局の需給調整事業部門が相談先です。
派遣切りと感じる場面には、契約途中の解除だけでなく、契約満了時の雇止めも含まれます。どちらにあたるかを就業条件明示書で確かめ、告げられた日時や理由を記録しておけば、どの窓口でも話がスムーズに進みます。
派遣切りはつらい出来事ですが、あなたが悪いとは限りません。一人で抱え込まず、使える窓口を頼りながら、次の仕事に向けて気持ちを切り替えていきましょう。












